短歌まじでわからない期に読んで面白いなと思った歌集・5選

昔noteで、

短歌始めてから読んで「短歌、面白いな」と思った歌集10冊|のつちえこ|note

という記事を書いたのだけど、今回は「短歌まじでわからない期に読んで面白いなと思った歌集」を紹介します。もちろん短歌がわかる期の人や短歌がわかりたい人が読んでも面白いです。要は普通に好きな歌集を紹介しました。

今橋愛『O脚の膝』

とらんぽりん
とんでたら。
子供だけですと注意をされて
わたし。
こどもです

年に一回は読み返す一冊。電子書籍版で購入しましたが、斉藤斎藤さんの解説含めてめっちゃいい。よわよわをつらぬくことで生まれる強さを体感できる。特に目を惹く行を分けて書くスタイル、遡れば啄木とかいるけど、現代短歌ではほぼ見ないなあと思う。これを読んで「短歌よくわからない…」となる可能性もありますが、行を分けて書くスタイルが作家によっては必然性を帯びてくるのが面白い。つまり私にとっての短歌を追求したらいいってことです。

 

inunosenakaza.stores.jp

𠮷田恭大『光と私語』

いつまでも語彙のやさしい妹が犬の写真を送ってくれる*1

一章を読み終えて、普通に短歌やめようと思ったくらい、完璧すぎるってうなだれた。軽い絶望だった。一首読ませて読者を目的地まで連れていくコントロールのよさがずば抜けてる。レトリックで歌作りたい人、これくらい極めないと突き抜けれないんじゃないかって今も思ったりする。あとこれは余談ですが、読んでる間にどうにか気持ちを持ち直したので短歌はやめないで済んだ。

 

www.sunagoya.com

魚村晋太郎『花柄』

つぎつぎとフォルダに来るspam mailさむい鷗の群れかも知れず*2

自分が版元のオンラインサイトで買ってから比較的すぐ入手できなくなった歌集なんですが、読み始めてすぐに「めっちゃ短歌だ!」と思った。詩情の美しさとか定型への収め方とか、なんていうか堂々と短歌をしていて、そうか短歌ってこういうものを見せていく表現形式だよな、と納得させられる感じ。そういう作品がずっと並んでいるのを読んでいくと、なんかだんだんそれを貫くことが狂気的な気さえしてきて変な興奮状態がもたらされた。こう書くと全然褒めてない感じなのがすごい申し訳ないんですが、極まってるなあと思う一冊。

 

相原かろ『浜竹』

煌々とコミュニケーション能力が飛び交う下で韮になりたい

短歌の中で面白いこと、例えばユーモアとか皮肉とか自虐とか、をするのって結構難しいと思う。短歌は何かと人と結びついてしまうせいで、そこに差し出されたものを受け取るのにちょっと慎重になる一瞬があったりする。そしてユーモアらは詩的な美しさとも相性が悪い。詩にうかつな隙間があると美しく整っているシュッとした顔ができないから。*3

この歌集は、ユニークでおもしろいのに詩情の美しさを身にまとうことをためらわない。変だと思う。普通どっちかに照れがでちゃうから、強調しようとするのはどっちかになるはずなのに。でも短歌ってそういうこともできるのかって思った一冊。

 

『渾沌の鬱』

妖怪の世に生れたるゆるきやらは地位低き妖怪の踊りするなり

普段口語で歌を作ってると、文語って難しそうだなあなあって思うじゃないですか。実はそんなことなくって、そんなことないっていうか、わかんないならわかんないなりに読めばいいから、実は大胆に自由になれる可能性が大きいのは文語なのかもしれないと思う。とか言いながら、この歌集は文語だけど、別に口語みたいな楽しさで読める。それは多分文語が手に馴染んでいる人の言葉だからな気がする。いや、普通に口語みたいな感覚で読める文語の歌や歌集って全然あると思うんですけど、手に馴染むそれでいてずっと瑞々しいというか、自分のなかではなんかこの歌集が好きなんですよね。そこをもうちょっと考えろよって話なんですけど、また今度考えます。あとツッコミの切れ味が良すぎてビビる。

 

ということで、本当は10選にしたかったんだけど、いつまでも公開できなさそうなので、また別の括りで他の歌集は紹介したいと思います。

*1:昔一首評書きました:

20.01.14|のつちえこ|note

*2:昔一首評書きました:

20.01.14|のつちえこ|note

*3:ちなみに短歌とユーモアについてはこの論が自分の中で印象に残っています:

年間テーマ「ユーモア」⑧|短歌結社 まひる野|note